jisalab SaaS

SaaSから送るメールが迷惑メールに入る問題を直す手順:送信元ごとにDKIMとReturn-Pathを確かめる(2026)

「SaaSのメールが届かない」という見出しのアイキャッチ。サブタイトルは「送信元ごとに、DKIMとReturn-Pathを確かめる4つの手順」。①どこから送っているか棚卸しする、②送信元ごとにDKIMとReturn-Pathを見る、③DKIM・SPF・DMARCを整える、④設定後に確かめ、見続ける、の4点が横に並び、①だけが明るい緑で強調されている。脚注は「手順の構成は jisalab編集部の整理(2026年9月21日)」。 SaaS
この記事の結論(先に3行)
  • SaaSから送ったメールが迷惑メールに入るとき、送信元ごとに受信したメールのヘッダーで dkim・spf・dmarc の結果を確かめ、SaaSが求めるDNSレコードを入れてから、もう一度確かめます。
  • From との一致(アライメント)は Google の要件では一括送信者向けですが、同社は全送信者に勧めています。この記事はDKIMから整えることを勧めます(編集部)。
  • 手順は4つ。SaaSを5つ使い、DNSを自社で操作できる会社で、初回に約3時間30分、以後は四半期ごとに約45分が目安です(jisalab編集部の試算)。

「請求書を送ったのに届いていないと言われた」「問い合わせフォームの自動返信が迷惑メールに入る」。この記事は、SaaSから自社ドメインの名前で送るメールを、送信元ごとに確かめて直す手順をまとめました。対象は、中小〜中堅企業の情シス、マーケティング、バックオフィスの担当者です。

最終更新: 2026年9月21日/Google Workspace 管理者ヘルプ(ガイドラインとよくある質問)、Gmail ヘルプ、Microsoft Learn、HubSpot ナレッジベース、RFC 7208・RFC 7489 は同日に原文を取得して確認しています。この記事の要件の基準は、Google の個人用 Gmail 宛ての要件です。Google の要件は Google Workspace アカウント宛て(取引先が Google Workspace を使っている場合の会社アドレスなど)には適用されず、Gmail 以外の受信事業者の要件もこの記事では確認していません。「(編集部)」は、出典に書かれていない jisalab 編集部の判断・解釈・推奨を示します。扱うのは認証の設定が原因の場合で、迷惑メール率など認証以外の原因はFAQで一部だけ補足します。管理画面の名称や要件は変更されることがあるため、作業の前に各社の公式ページもご確認ください。

なぜSaaSのメールは迷惑メールに入るのか

受信側は、メールが From のドメインの持ち主に認められた送信かを確かめます。SaaSは自社ドメインの名前で送るので、SaaSごとに自社ドメインで認証される設定が要ります。
この記事で使う6つの言葉(RFC 7208・RFC 7489・Microsoft Learn をもとに編集部が要約)
言葉 意味
From 受信者に表示される差出人のアドレス
組織ドメイン example.co.jp のような、サブドメインを除いた登録ドメイン。この記事の「自社ドメイン」は、From と同じ組織ドメインに属するドメイン(サブドメインを含む)のこと。DMARCはこの組織ドメインに置く
Return-Path 送信の裏側の差出人(MAIL FROM)。エラーで戻るメールの宛先で、受信者にはふつう見えない
SPF Return-Path のドメインが、DNSに「このサーバーから送ってよい」と書いているかの確認
DKIM メールに付ける電子署名。署名したドメインはヘッダーの d= に出る
DMARC SPFかDKIMのどちらかが合格し、そのドメインが From のドメインと一致しているかの確認と、そのときの扱いの宣言

請求管理、問い合わせフォーム、メール配信、採用管理、グループウェア。これらを1つのドメイン(例: example.co.jp)の名前で使うと、受信側から見れば、同じドメインを差出人にしたメールが、別々のサーバーから届いている状態になります。ところがSaaSの初期状態では、自社ドメインで認証されていないことがあります。Microsoft Learn「クラウド ドメインからメールに署名するように DKIM を設定する」は「多くのホストされた電子メール サービスは、サービス ドメインを使用してメッセージに署名し、顧客がドメインの DKIM 署名を構成した後、顧客ドメインを使用してメッセージに再度署名します。」としています。

何を満たせばよいかを、Google のガイドラインとよくある質問から編集部が3層に整理しました。

要件と推奨の3層(出典: Google Workspace 管理者ヘルプ「メール送信者のガイドライン」「よくある質問」2026年9月21日取得)
層 中身
全送信者の要件 「すべての送信者: SPF または DKIM」。あわせてPTRレコード、TLS接続、RFC 5322準拠の形式、Gmail の From: ヘッダーのなりすまし禁止、迷惑メール率0.3%未満。DKIMを使うなら鍵は1,024ビット以上
一括送信者の要件 「一括送信者: SPF、DKIM、DMARC」。個人の Gmail に直接送るメールは From のドメインをSPFかDKIMの組織ドメインと一致させる。マーケティング・配信登録のメールはワンクリック登録解除など(後述)
Google の推奨 ガイドラインは「メールが確実に配信されるようにするには、ドメインに SPF、DKIM、DMARC を常に設定することをおすすめします。」としている。よくある質問は、すべての送信者に SPF と DKIM の両方での一致を勧め、将来は要件になる可能性があるとしている

よくある質問は、DMARC 認証に失敗したメールの扱いを説明するなかで「送信元ドメインに DMARC ポリシーがない場合、メールは拒否されるか、迷惑メールに分類される可能性があります。」としています。2025年11月からは非準拠の送信への措置を強めているともしています。PTRレコード(IPアドレスからホスト名を引く逆引きの設定)とTLS接続(通信の暗号化)は送信サーバー側の設定なので、SaaSから送るメールではSaaS事業者の側の作業です(編集部の整理)。

1つの自社ドメインから複数のSaaSがメールを送る構図の図解。上段に請求管理・問い合わせフォーム・メール配信・採用管理・グループウェアの5つのSaaSが並び、いずれも同じ組織ドメインを差出人にして送信している。下段の自社ドメインのDNSレコードに、SPFはホスト名ごとに1本でReturn-Pathのドメインで評価される、DKIMは送信元ごとに足しFromとの一致はまずここで取る、DMARCは組織ドメインに1本でサブドメインは継承し、まず none で始める、という対応が示されている。
送信元とDNSレコードの対応(jisalab編集部作図/2026年9月21日)。SPFはホスト名ごとに1本、DMARCは組織ドメインに1本(サブドメインは継承)、DKIMは送信元ごとに増えます。

手順①:自社のドメインから、どこがメールを送っているかを1枚にする

設定の前に棚卸しをします。「自社ドメインの差出人でメールを出しているSaaS」を全部書き出し、手順②と④の確認結果を書き込む欄を作ります。

埋める相手は情シスだけでは足りません。営業・マーケティング・人事・経理に「お客様や応募者にメールを送っているツールはありますか」と聞くのが早道です。

送信元の棚卸し表(ひな形・jisalab編集部作成/2026年9月21日)
列 書くこと 記入例
サービス名 メールを送っているSaaS・システム 問い合わせフォーム
差出人アドレス 受信者に表示される From のアドレス info@example.co.jp
用途 販促か、請求・通知などの取引上のメールか 自動返信
ふだんの1日の通数 だいたいの件数と、そのうち @gmail.com・@googlemail.com 宛ての割合 約30通(Gmail宛て約4割)
最も多い24時間の通数 送信ログが残っている範囲で、日付をまたぐ場合も含めて、連続する24時間に最も多く送った件数とその期間、そのうち個人の Gmail 宛ての件数。配信ツールで割合が取れなければ、宛先リストをドメイン別に数える 7月10日20時からの24時間で約6,000通(Gmail宛て約2,400通)
確認結果 手順②と④で見た dkim・spf・dmarc の結果と、DKIMの署名ドメイン・Return-Path のドメイン dmarc=fail、DKIMはサービス側

手順②:送信元ごとに、いまの認証の結果を確かめる

各SaaSから @gmail.com の個人アカウント宛てに1通送り、ヘッダーの dmarc・dkim・spf の結果を見ます。dmarc=pass でない送信元(DMARCが未設定なら、DKIMでもSPFでも From と一致していない送信元)が、手順③で必ず直す対象です(この記事の基準)。

Gmail のヘルプによると、メールを開いて返信アイコンの横のその他アイコンから[メッセージのソースを表示]を選ぶと、詳細ヘッダーが表示されます。見るのは Authentication-Results の行です。Microsoft Learn の同ページは、この行の例として dkim=pass header.i=@contoso.com や smtp.mailfrom= を含む行を載せています。smtp.mailfrom= は SPF の判定に使われた Return-Path で、@ より後ろがドメインです(RFC 7208 4.1 節による編集部の説明)。読み取りに自信がなければ、Gmail ヘルプのとおり、コピーしたヘッダーを Google 管理者ツールボックスの「メッセージ ヘッダー」で分析できます。

SPF・DKIM・DMARCの結果は、自社のDNSとSaaSの設定で決まります。そのため @gmail.com 宛てのテストで、請求書のように取引先宛てに送るメールの設定の状態も確かめられます(編集部)。同じSaaSでも、請求・通知のメールと配信のメールで送り方が分かれることがあるので、種類ごとに1通ずつ送ります。

ヘッダーの読み方(編集部の整理・2026年9月21日)
見る項目 意味 自社ドメインの扱い
dmarc= From との一致が取れているかの最終結果 pass なら、この送信元は一致が取れている
dmarc= が無い、または直後の値が none DMARCがまだ置かれていない 下の2行で、DKIMの署名ドメインか Return-Path が From と組織ドメインで一致しているかを見て判断する
dkim= と header.i=@ DKIMの結果と、署名に関わるドメイン(署名ドメインそのものは DKIM-Signature ヘッダーの d=) dkim=pass で、署名ドメインが自社ドメイン(サブドメインを含む)なら、DKIMで一致を取れる。dkim= が2つ並ぶことがあり、サービス側のドメインの pass しか無ければ、自社ドメインのDKIMはまだ効いていない(編集部の整理)
spf= と smtp.mailfrom= SPFの結果と、SPFが見た Return-Path のドメイン SPFは、このドメイン名そのものに置かれたSPFレコードで評価される。example.co.jp のSPFが使われるのは、ここが example.co.jp のときだけで、bounce.example.co.jp のようなサブドメインなら、そのサブドメインのレコードが使われる(RFC 7208 4.1・4.4 節)

一致の判定は組織ドメイン(example.co.jp のような、サブドメインを除いた登録ドメイン)単位です。既定の relaxed モードでは、サブドメインどうしも一致とみなされます(RFC 7489 3.1.1 節・3.1.2 節・6.3 節)。

読み取った2つのドメインを組み合わせると、送信元ごとの次の作業が決まります。

送信元ごとの判定と次の作業(編集部の整理・2026年9月21日)。手順④の再テストもこの表で読みます
DKIM SPF(Return-Path) From との一致 Google の要件上(一括送信者でない場合) 編集部の推奨
dkim=pass で d= が自社ドメイン 自社ドメインで spf=pass 両方 完了 完了
dkim=pass で d= が自社ドメイン サービス側、または spf=pass でない DKIMだけ 完了 Return-Path を自社のサブドメインにする設定があれば使う
サービス側だけ、署名なし、または自社ドメインで fail 自社ドメインで spf=pass SPFだけ 完了 手順③でDKIMも自社ドメインにする
サービス側のドメインで dkim=pass か spf=pass(どちらか一方でも)。自社ドメインでの pass は無い なし 一致は要件ではない(「送信元ドメイン」がサービス側のドメインで足りるかは明記なし) 手順③でDKIMを自社ドメインにする。対応していなければ、差出人かツールを見直す
自社ドメインでもサービス側でも、dkim・spf とも pass が無い なし 要件未達(SPF か DKIM のどちらかの認証が要る) 手順③でDKIMを自社ドメインにする

「自社ドメイン」は From と組織ドメインが同じ(サブドメインを含む)という意味です。一括送信者でない場合、From との一致は Google の要件ではなく、DMARC は片方の一致で pass になります。両方での一致は Google の推奨です。一括送信者は、どの行でも「一括送信者に当たる場合だけの作業」の要件(SPF と DKIM の両方の設定など)を確かめます。

手順③:SaaSが求めるレコードを入れ、SPFとDMARCを1本にまとめる

各SaaSの管理画面が求めるDNSレコード(DKIMは必ず)を入れます。既存のSPFには追記し、DMARCは組織ドメインに1本だけにします。無ければ none で新しく置きます。

SaaSが求めるレコードを入れる

SPFとDKIMは、SaaSがサブドメイン(bounce.〜、info.〜など)へのレコードを求めれば、そのホスト名に置きます(そのホスト名にSPFがすでにあれば追記します)。

何が要るかはSaaSごとに違います。HubSpotのナレッジベース「メール認証を管理する」の接続手順では、MX・DKIM・SPF・DMARCの4種類のDNSレコードを設定し、DKIMはCNAMEが2つ、SPFとDMARCはTXTが1つずつです。MXのように受信に関わるレコードは、SaaSが指定するホスト名にだけ置き、自社のメールを受けているルートのMXは変えません(編集部)。SaaSがDMARCのレコードを表示しても、組織ドメインの _dmarc にすでにあれば作りません。HubSpot は認証ステータスの注記で「ルート ドメイン レベルでDMARCレコードが設定されている場合、DMARCポリシーの継承により、サブドメインは認証されたとみなされます。」としています。サブドメインに新しく置くと、組織ドメインのポリシーを上書きすることになります(RFC 7489 6.6.3 節)。

HubSpot では、他の目的(ウェブサイトのホスティングなど)に使っているドメインは送信ドメインとして認証できません。自社サイトと同じドメインが当たる可能性があるので(編集部)、HubSpotの画面表示で確かめ、必要なら送信用のサブドメインを検討します(差出人アドレスも変わります)。Microsoft Learn も「直接制御しないメール システムまたはサービスにはサブドメインを使用することをお勧めします。」としています。HubSpotの画面操作は、jisalabのHubSpotレビューで解説しています。

From との一致は、まずDKIMで取ります(編集部)。よくある質問は、一括送信者について「一括送信者は SPF と DKIM の両方の認証を設定する必要がありますが、送信者のアラインメント要件を満たすために必要な設定はいずれか一方のみです。」としています。Return-Path をSaaS側から変えられなくても、DKIMなら自社ドメインで署名できます。Microsoft Learn の同ページも、Return-Path が配信サービスのドメインのままでも、DKIM の署名ドメイン(d=)が From のドメインと一致すれば(例では marketing.contoso.com)DMARC に合格しうる例を挙げています。自社ドメインでのDKIM署名に対応していないSaaSは、差出人をそのSaaSのドメインのままにするか、別のツールに替えるかを検討します。

DKIMの鍵の長さ

Googleのガイドラインは「重要: 個人用 Gmail アカウント宛てに送信するには、1,024 ビット以上の DKIM 鍵が必要です。」とし、ドメイン プロバイダが対応している場合は2,048ビットを推奨しています。Microsoft 365 では、PowerShell で鍵を作る場合の既定が1,024ビットで(Microsoft Learn)、鍵長の変更はキーのローテーションで反映され、新しいキーで署名が始まるまで「4 日間 (96 時間)」かかります。ほかのSaaSの鍵長は、SaaSのヘルプか管理画面のDKIM設定で確かめ、表示が無ければSaaSのサポートに問い合わせます。

SPFはホスト名ごとに1本、問い合わせは10項目まで

SPFを同じホスト名に2本置くと、SPFの評価そのものが “permerror”(設定の誤りによるエラー)になります(RFC 7208 4.5 節)。SaaSが同じホスト名への追記を求めてきたら、既存の1本に足します。HubSpotは v=spf1 include:anotherprovider.com include:123456.spf03.hubspotemail.net -all という例を示し、「SPFバージョンと「-all」フラグがそれぞれ一度だけ含まれていることを確認します。」としています(-all は、記載のない送信元を認めないという意味)。

DNS への問い合わせを起こす項目(include: のほか a・mx・ptr・exists と redirect)は、評価全体で合計10までです。超えると結果は “permerror” になります(RFC 7208 4.6.4 節)。include: の先の include: も同じ10に数え(同4.1 節)、ip4・ip6・all は数えません(同4.6.4 節)。

DMARCは1本、noneから始める

DMARCは一括送信者には要件、それ以外の送信者には Google の推奨です。DMARCのレコードが同じホスト名に2本以上あると、受信側はそのメールにDMARCを適用しません(RFC 7489 6.6.3 節)。記述の例は、RFC 7489 付録 B.2.1 が _dmarc に TXT で "v=DMARC1; p=none; rua=mailto:dmarc-feedback@example.com" を置く形で示しています(rua はレポートの送り先)。Google のガイドラインも、一括送信者の要件について「DMARC 適用ポリシーは none に設定できます。」としています。いきなり reject にすると、設定漏れのSaaSからのメールが止まると考えられます(編集部)。この記事は none までを扱います。

手順④:設定後にもう一度確かめ、SPFを整理し、見続ける

DNSの反映を待ってから手順②の受信テストをやり直し、dmarc=pass を確かめ、解約したSaaSの SPF の記述を片づけます。迷惑メール率を見るために、Postmaster Tools も準備します。

DNSの変更はすぐには反映されません。HubSpotのナレッジベースは「DNSレコードの更新には通常10分から70分かかりますが、場合によっては48時間もかかる場合があります。」とし、Microsoft Learn は「DNS プロバイダーと TTL の設定によっては、DNS 伝達に数分から 48 時間かかることがあります。」としています。レコードの反映は、Microsoft Learn が Microsoft 365 の例として示す nslookup -type=CNAME selector1._domainkey.contoso.com のようなコマンド(セレクター名は各SaaSの表示に置き換え、鍵を TXT で置くSaaSなら -type=TXT にします)か、HubSpotが挙げる MX Toolbox の「SPFレコードチェック」「DKIMレコード検索」、dmarcian の「DMARCレコードチェッカー」で確かめます。

テスト結果の読み方

再テストの結果も、手順②の判定表で読みます。表だけでは直し方が分からない3つの場合を補足します。

  • 自社ドメインの署名が dkim=fail: DNSの鍵のレコードが、SaaSの表示どおりのホスト名と値で入っているかを見直します
  • DKIMの署名ドメインがまだサービス側: SaaSの管理画面で、自社ドメインの送信設定が有効になっているかを見直します
  • Return-Path が自社ドメインなのに spf=pass でない: SaaSが指定するSPFの記述を、Return-Path のドメイン名のSPFに足します。Return-Path を自社のサブドメインにする設定を使った場合は、SaaSの指定どおりのレコードをそのサブドメインに置きます(そのホスト名にSPFがすでにあれば追記します)

SPFの整理

  • 使っているSaaSの分: Return-Path がサービス側でも、組織ドメインのSPFに残します。ガイドラインは「ドメインの SPF レコードには、ご使用のドメインのすべてのメール送信元を含める必要があります。」とし、続けて「サードパーティ送信者が SPF レコードに含まれていない場合、この送信者から送信されたメールは、迷惑メールに分類される可能性が高くなります。」としています。10回の上限を超えそうなときだけ、Return-Path がサービス側のSaaSの include: を外す候補にします(SPFの合否には効いていないため。編集部)。ただし外すと、ガイドライン上は迷惑メールに分類されやすくなるおそれを負うので、SaaSのヘルプで要否を確かめてから判断します
  • 解約したSaaSの分: 消します。元の事業者の送信サーバーに、自社ドメインの名前での送信を認め続けることになるからです(編集部)。10回の枠も消費し続けます。参照先のドメインが消えると、評価がその include: に達したときに結果は “permerror” になります(RFC 7208 5.2 節・4.3 節)

迷惑メール率とドメインの評価は、Google が送信者向けに提供する Postmaster Tools で確認できます(ガイドライン)。送信ドメインを Postmaster Tools に登録しておきます(登録の手順は Google のヘルプを参照してください)。そのあと四半期ごとに、全送信元の受信テスト(新しく増えた送信元を含む)、DMARCレポート、迷惑メール率の3つを見ます。DMARCレポート(受信側から rua の宛先に届く集計のXMLファイル)に棚卸し表に無い送信元が出ていたら、ガイドラインのいう「ご利用のドメインになりすましている可能性のある送信者」か、漏れていたSaaSです。社内で心当たりを確かめ、使っていない送信元ならSPFやDKIMに足しません。ガイドラインの監視の項は「Postmaster Tools で報告される迷惑メール率を 0.10% 未満に維持し、迷惑メール率が決して 0.30% 以上にならないようにします。」としています。

一括送信者に当たる場合だけの作業

個人の Gmail 宛てを、同じプライマリドメインから24時間で5,000件近く送ったことがあれば一括送信者です。当たる場合は、SPF と DKIM の両方の設定、DMARC、From との一致が要件になり、マーケティング・配信登録のメールにはワンクリック登録解除などが加わります。

数えるのは個人の Gmail 宛てだけです(よくある質問)。同じプライマリドメインから送ったメールは合算します(よくある質問の例では、solarmora.com と promotions.solarmora.com の件数を足します)。一度当たれば、恒常的に一括送信者とみなされます。

数え方は2段にします(編集部)。まず棚卸し表の各行の「最も多い24時間」の個人の Gmail 宛て件数を、期間が違っても単純に足します。各行の最大が同じ24時間に重なるとは限らないので、この合計は実際の最大と同じか、それより大きくなります。合計が2,500件未満(「5,000件近く」に数値の定義がないので、その半分を十分に離れているとみなす目安。編集部)なら、一括送信者には当たらないと判断します。2,500件以上なら、各ツールの送信ログで同じ24時間にそろえて合算し、その合計も2,500件以上なら一括送信者として扱います(編集部)。送信ログの保存期間より前の送信は数えられないので、過去に大量配信をした覚えがあれば、その分も含めて判断します。

  1. DKIMは自社ドメインで: ガイドラインの要件は「ドメインに SPF および DKIM メール認証を設定します」で、別の箇所では「メールを送信するドメインで DKIM を有効にします。」としています。サービス側のドメインの署名で足りるかは明記がないので、自社ドメインで署名させ、対応していないSaaSから個人の Gmail に送るのは見直します(一度一括送信者になれば、同じプライマリドメインから個人の Gmail に送るメールすべてが要件の対象になるため。編集部)
  2. SPFもできれば自社ドメインで: サービス側のドメインでの spf=pass で足りるかも、ガイドラインとよくある質問のどちらにも明記がありません(2026年9月21日時点)。ガイドラインが推奨する送信方法は「組織レベルで一致している SPF と DKIM を使用してメールを認証します。」なので、Return-Path を自社のサブドメインにする設定があれば使い、無ければSaaSの対応予定を棚卸し表に記録します(編集部)
  3. Postmaster Tools での確認: よくある質問は「一括送信者は、Postmaster Tools を使用して、メールの処理方法がメール送信者のガイドラインに準拠していることを確認する必要があります。」としています
  4. ワンクリック登録解除: ガイドラインは一括送信者の要件として、マーケティング目的のメールと配信登録されたメールにワンクリック登録解除を求めています。購読の節では「1 日に 5,000 件を超えるマーケティング目的のメールや配信登録されたメールを送信する場合」とも書いていて表現が揃っていないので、一括送信者に当たるなら、販促メールの件数にかかわらず入れる前提で進めます(編集部)。送信メールに List-Unsubscribe-Post: List-Unsubscribe=One-Click と List-Unsubscribe: の2つのヘッダーを入れ、あわせてメッセージ本文にも登録解除のリンクをわかりやすく表示する必要があります(ガイドライン)。本文のリンクだけではワンクリックの要件を満たしません(よくある質問)。SaaSから送る場合は、ヘッダーを追加するオプションがあるかを確かめます
  5. 請求書などの取引メール: よくある質問は、トランザクション メールをワンクリック登録解除の要件から除外し、例に「パスワードの再設定、予約の確認、フォーム送信の確認」を挙げています。ただし「メールの性質は、Google ではなく受信者が判断します。」ともしているので、請求書のメールに販促の内容は混ぜません(ガイドラインも、領収書のメールにプロモーションの内容を含めないよう求めています)
  6. 登録解除の反映: よくある質問は48時間以内の対応を「おすすめします」としつつ、措置の表では48時間以内に反映されないことを措置の対象に挙げているので、48時間以内に反映させます

ワンクリック登録解除を満たしていなくても、メールが「自動的に拒否されたり、迷惑メールに分類されたりすることはありません」(よくある質問)。ただし同FAQは、ワンクリック登録解除の無い未承諾メールは迷惑メールとして報告されやすくなるとしています。

初回にかかる時間(試算)

SaaSを5つ使っている会社で、初回は約3時間30分です。いちばん時間を使うのは、SaaSが求めるDNSレコードの追加と、各部署への確認を含む棚卸しです。
所要時間の試算(SaaS5サービス・DNSを自社で操作できる場合/jisalab編集部の試算・2026年9月21日)
手順 やること 時間
手順① 各部署への確認と棚卸し表の作成(5サービス×約10分) 50分
手順② 各SaaSから受信テストを送り、ヘッダーを読む(5サービス×約5分) 25分
手順③ SaaSが求めるレコードの追加(5サービス×約15分) 75分
手順③ DMARCレコードの作成とレポート送付先の設定 15分
手順④ 反映の確認と受信テストのやり直し、SPFの整理 30分
手順④ Postmaster Tools への送信ドメインの登録(初回のみ) 15分
初回の合計 210分(約3時間30分)
2回目以降(四半期ごとの点検: 全送信元の受信テスト約25分、DMARCレポート約15分、迷惑メール率約5分) 約45分

この表の数値はjisalab編集部が置いた作業量の目安で、実測値でも公式資料の数字でもありません。DNSの反映を待つ時間、一括送信者に当たる場合の配信ツール側の確認、1サービスでメールの種類ごとに複数通送る場合の追加分は含めていません。DNSの操作を外部に委託している場合は、依頼と回答の往復ぶんを別に見込んでください。

職種別に、どこから手をつけるか

全部を一度にやる必要はありません。届かないと実害が出る送信元から、手順②〜④を通します。
  • 経理・バックオフィス: 請求書と入金案内の送信元を最初に通します。届かないと入金の遅れにつながります
  • 人事・採用: 応募者への連絡は個人のアドレス宛てが多くなりがちです(編集部)。届かないまま辞退として処理されると原因が分かりません
  • マーケティング: 配信ツールは通数が多く、一括送信者の判定とワンクリック登録解除に直結します
  • 情シス: SPFのDNS問い合わせの回数(手順③の対象項目を、入れ子の include: の先まで数えます)と、送信元ごとの確認結果を管理します。手順①の表を共有ドライブに置き、契約の申請とひも付けてください

次に取る行動

今日できるチェック
  • 各部署に「お客様や応募者にメールを送っているツール」を聞き、手順①の表に自社ドメインの差出人で送っているSaaSをすべて書き出す
  • 請求書を送っているSaaSから @gmail.com の個人アカウント宛てに1通送り、[メッセージのソースを表示]で dmarc・dkim・spf の結果を確かめる
  • dmarc=pass でない送信元について、SaaSの管理画面が求めるDNSレコードを確かめる
  • 現在のSPFレコードが1本か、解約済みのSaaSの include: が残っていないかを確かめる
  • 一括送信者に当たるかを、一括送信者の章の2段の数え方で判定する

よくある質問

SPFとDKIM、どちらを優先すればよいですか。
まずDKIMです(手順③)。ただしSPFも外しません。ガイドラインは「メールサービス プロバイダを利用している場合は、プロバイダが SPF と DKIM でドメインのメールを認証していることを確認してください。」としているので、両方を確かめます。
SaaSの管理画面では「認証済み」と表示されているのに、迷惑メールに入ります。
手順②の受信テストで dmarc の結果を確かめてください。dmarc=pass でなければ、From との一致が取れていません(DMARC未設定の場合は手順②の表で確かめます)。pass なのに迷惑メールに入るなら、Postmaster Tools で迷惑メール率を見ます。Googleのガイドラインは、迷惑メール率が高い状態が続くと迷惑メールへの分類が増えるとしており、認証の設定だけでは解消しないことがあります。
うちは1日100通ほどです。それでも対応は必要ですか。
個人の Gmail 宛てに送っているなら必要です。Googleのガイドラインは「すべての送信者」に対して、件数を問わずSPFまたはDKIMによる認証などを求めています。同ヘルプは、認証されていないメールについて「迷惑メールに分類されたり、5.7.26 エラーで拒否されたりすることがあります。」としています。Gmail 以外の受信事業者の要件はこの記事では確認していませんが、設定は同じものをそろえておくことを勧めます(編集部)。

出典
確認日: 2026年9月21日。各ページは同日に原本を取得し、引用文字列が原文と一致することを確認しています。実機での設定は行っていません。DNSレコードの操作は自社の環境に影響します。作業前に既存レコードの控えを取ってください。

タイトルとURLをコピーしました