- 無料プランの制限は、当たったときの結果で「消える・止まる・隠れる」に分けて考えます。データが失われる前に動く必要があるのは「消える」だけです。
- Slackの「90日」は、ワークスペースのメッセージとファイルの保存設定しだいで「隠れる」にも「消える」にもなります。無料のまま書き出して残せるのも、パブリックチャンネルに限られます。
- 最初にやるのは料金の比較ではなく、主要SaaSの保存設定と公式ヘルプを見て「消える」制限を探すことです。有料化が必要でも、まず一番下の有料プランで足りるかを確認します。
この記事は、無料プランの制限を性質で仕分けて、有料化を急ぐべきかを判断する手順を解説します。対象は、情シス専任がいない中小〜中堅企業で、ツールの契約を任されている管理部門・現場リーダーの方です。
最終更新: 2026年9月17日/引用した各社の公式ヘルプ・料金ページは、すべて同日に原文を確認しています。「消える・止まる・隠れる」の区分と費用の試算は編集部によるもので、各社の公式資料にこの区分はありません。
「まだ無料で足りている」が危ないのはどんなときか
無料プランの制限は、たいてい「◯日まで」「◯人まで」「◯MBまで」という数字で書かれています。ところが実際に当たったときの結果は、まったく違います。
Slackのフリープランがよい例です。Slackヘルプセンター「無料ワークスペースにおける使用制限」には、「90 日が経過したメッセージとファイルはワークスペースで非表示になります。1 年以上経過したメッセージとファイルは完全に削除されます。」とあります。90日で見えなくなり、1年で消える、という2段階です。
ただし、同じページの「データの保存」の項には次の一文もあります。「90 日が経過した後にメッセージとファイルを削除するように選択した場合は、メッセージとファイルの表示上限に達して非表示になったメッセージとファイルは自動的に削除されます。」ワークスペースのオーナーは、1年間保持するか、90日経過後に削除するかを選べます。後者を選んでいれば、90日を過ぎた時点で消えます。
無料プランの制限は「消える・止まる・隠れる」に分けて考える
当たったあとの結果で分けると、制限は次のように整理できます。有料化の判断で優先度が高い順に並べています。
- 消える: データそのものが失われる制限です。失われる日より前に手を打つ必要があります。公式の記載だけでは消えるかどうか分からないものも、ここに入れて扱います。
- 止まる: 人数・容量・個数の上限で、追加や編集ができなくなる制限です。データは残りますが、上限に触れた日から作業が止まります。
- 隠れる: 表示や検索ができなくなるだけで、データは残っている制限です。隠れたデータが後で消える場合は、その期限を「消える」として扱います。
主要3サービスの無料プランを当てはめると、次のとおりです。
| サービス | 公式の記載(要約) | 区分 | 当たったときの結果 |
|---|---|---|---|
| Slack | 90日を過ぎたメッセージとファイルは非表示(1年間保持する設定の場合) | 隠れる | 表示・検索できない。料金ページは、過去12か月分へのアクセスにはアップグレードが必要と案内 |
| Slack | 1年以上経過したメッセージとファイルは完全に削除 | 消える | 保存設定に従って削除されたデータは復元できない(公式ヘルプ) |
| Slack | メッセージの保存設定(データの保存)を「メッセージを 90 日経過後に削除する」にした場合 | 消える | 90日を過ぎたメッセージが削除される |
| Slack | ファイルの保存設定(ファイル履歴)を「削除されたコンテンツを含め、ファイルを 90 日間保存する」にした場合 | 消える | 90日を過ぎたファイルが完全に削除される |
| Slack | サードパーティ製アプリやカスタムアプリは最大10個 | 止まる | 11個目を入れられない。既存をアンインストールすれば空く |
| Trello | コラボレーターは10人まで | 止まる | 10人以上で新規追加ができず、10人を超えるとボードが閲覧専用になり自動化も止まる |
| Notion | 画像・動画・添付ファイルはそれぞれ最大5MB。2人以上で使うとブロック数にも制限 | 止まる | 5MBを超えるファイルを上げられない。ブロック数の上限に達すると、既存の内容は編集できるが新しいブロックを追加できない |
| Notion | ページの履歴は7日 | 消える(履歴のみ) | 現在の内容は残るが、7日より前の版には戻せない |
出典: Slackはヘルプセンター「無料ワークスペースにおける使用制限」「Slack でのデータ保存をカスタマイズする」と料金プランページ、Trelloはアトラシアン サポート「無料ワークスペースのコラボレーター制限」、Notionは料金ページ(いずれも2026年9月17日確認)。
「止まる」は軽く見えますが、Trelloの例は重めです。アトラシアン サポートは「現在ワークスペースに 10 人を超えるコラボレーターがいる場合、そのワークスペースのボードは閲覧専用になります。」とし、その間はボードに設定した自動化も実行されないと書いています。さらに、10人以上いる間は新しいコラボレーターを追加できません。実際に詰まるのは、10人に達して次の人を招待しようとした時点です。有料プランから無料プランに戻した場合も、サブスクリプションが終了した時点から10人までに制限されます。
手順:自社に「消える」制限があるかを先に調べる

- 対象を5本までに絞る。全部を対象にすると終わりません。業務が止まったら困る順に5本まで書き出します。契約の一覧が無いなら、先にSaaSの棚卸しでムダな出費を減らす手順で洗い出すほうが早道です。
- 管理画面で保存設定を確認する。Slackのヘルプ「Slack でのデータ保存をカスタマイズする」によると、保存設定はメッセージとファイルで別々です。サイドバーの「管理者」→「ワークスペースの設定」から、メッセージは「データの保存」の「展開」、ファイルは「ファイル履歴」の「展開する」の2か所を開きます。フリープランの選択肢は、メッセージが1年間保存か「メッセージを 90 日経過後に削除する」、ファイルが1年間保存か「削除されたコンテンツを含め、ファイルを 90 日間保存する」です。選べるのはワークスペースのオーナーなので、自分がオーナーでなければ確認を依頼します。開くだけにして、保存はしないでください。同ヘルプは「削除は 1 日に 1 回実行されるため、保存設定を変更した直後にデータが削除されることがあります。」と注意しています。
- 公式ヘルプで「削除」を探し、3つに振り分ける。探す語は「削除」「消去」「保持」、英語のページなら “delete” “retain” です。「非表示」は隠れる、「閲覧専用」「アップロードできない」は止まるに入ります。期間は書いてあるのに、過ぎたあとデータが残るかが書かれていないものは、消えるに入れて公式サポートへ問い合わせます。止まるに入ったものは、管理画面で上限までの残りを数えておきます(Trelloならワークスペースのメンバーページのサイドバーに人数が出ます)。
- 「消える」があったら、期限から逆算して対処を決める。Slackで1年間保存の設定なら、いま残したい最古のメッセージの日付に1年を足した日が目安です。ただし同社は1年以上経過したデータについて「順次削除される場合があります」とも書いており、1年を過ぎた分は、いつ消えてもおかしくありません。余裕を持って予定を組みます。全期間を残すなら有料化、特定の記録だけでよければ書き出して社内に保管します。ただしSlackのヘルプ「ワークスペースのデータをエクスポートする」によると、フリーとプロで書き出せるのはパブリックチャンネルのメッセージとファイルのリンクだけで、プライベートチャンネルとDMは利用不可、さらに「フリープランのワークスペースでは、過去 90 日間のファイルへのリンクのみをエクスポートできます。」90日を過ぎて非表示になった分が書き出しに含まれるかは公式ヘルプで確認できなかったため、実際に書き出して確かめてください。書き出しの注意点はSaaSを解約・乗り換える前にデータを取り出す手順にまとめています。
職種に置き換えると、判断の分かれ目が見えやすくなります。経理・総務で、取引先との条件のやりとりがSlackにしか残っていないなら、それは「消える」側の問題です。やりとりがDMやプライベートチャンネルにあるなら、無料のままでは書き出せないので、有料化の判断を急ぎます。営業の顧客対応の経緯も同じです。一方、制作チームがTrelloでタスクを管理し、外部の協力会社を招待しているなら、当たるのは「止まる」です。こちらは人数が10人に近づいた時点で、有料化するか招待を整理するかを決めれば足ります。
費用の試算:まず一番下の有料プランで足りるかを見る
12人のチームが1年間使う場合を、公式ページに出ている金額で計算しました。3社とも、ここで取り上げた制限は一番下の有料プランで外れると公式に書かれています。足りない例もあります。Slackでプライベートチャンネルや DM まで書き出すには、ビジネスプラス以上で、オーナーによる申請が必要です。
| サービス/プラン | 公式表示(1人あたり月額) | 12人×12か月 | 外れる制限(公式の記載) |
|---|---|---|---|
| Slack プロ | 年払い ¥925/月払い ¥1,050 | 年払い ¥133,200/月払い ¥151,200 | メッセージ履歴が無制限 |
| Notion プラス | 年払い ¥1,650/月払い ¥2,000 | 年払い ¥237,600/月払い ¥288,000 | ブロック数の制限なし、ファイルアップロード無制限(1ファイル最大5GB) |
| Trello Standard(米ドル建て) | 年払い $5/月払い $6 | 年払い $720/月払い $864 | コラボレーターの人数に上限なし(有料プラン共通) |
金額は各社料金ページの表示のままです。Slackのページに併記されていた期間限定の割引後価格は使っていません。Notionは料金ページの「月払い/年払い」の切り替えで表示される額です。Trelloは米ドル建てのため円換算していません。「外れる制限」の出典は、Slack・Notionが各社料金ページ、Trelloがアトラシアン サポート「無料ワークスペースのコラボレーター制限」です。税の扱いは、Notionは各プランに「日本の消費税(該当する場合)」と記載していますが、SlackとTrelloの料金ページでは確認できませんでした。
払い方の差は、Slackで年¥18,000(¥151,200−¥133,200)、Notionで年¥50,400(¥288,000−¥237,600)です。
請求の細則も額を動かします。Slackは、28日間アクションのないメンバーに未使用分の日割りクレジットを付与するとしており、上の額は全員が使い続けた場合です。Trelloは、ワークスペース内の複数のボードに参加しているゲストもメンバーと同じ料金で請求されます。どのツールを選ぶかから考え直すなら、プロジェクト管理SaaS比較やSlackレビュー・Notionレビュー・Trelloレビューで各プランの中身を確認できます。
日本の読者にとっての意味
日本の中小企業がこの判断を稟議に載せるときは、料金表の金額に加えて2つの点を確かめておきます。
1つ目は為替です。SlackとNotionは円建ての価格を表示していますが、Trelloは米ドル建てです。12人・年払いで$720という額は決まっていても、円での支払額は決済時のレートで変わります。稟議に出すときは「米ドル建て・為替により変動」と明記し、予算に幅を持たせておくほうが安全です。
2つ目は支払い方法です。Slackの料金ページは、どのプランもクレジットカードに対応し、年払いならACHまたは銀行送金による請求書払いを利用できる場合があるとしています。請求サイクルの変更や請求書払いへの切り替えは、いつでも実行できるとも案内しています。Notionの料金ページが挙げる支払い方法は、主要なクレジットカードとデビットカードです。経理が請求書払いを前提にしている会社では、年払いか月払いかの選択が、支払い方法の選択にもなります。
つまずきやすい点
- 無料のままでも書き出せば残せると思っている: Slackのフリープランで書き出せるのはパブリックチャンネルだけなので(手順4)、大事なやりとりがDMにあるなら、この方法では残せません。
- 人数を社員名簿で数えている: アトラシアン サポートがTrelloの人数に数える対象として挙げているのは、ワークスペースのメンバー、ワークスペースに所属しないボードメンバー(ゲスト)、「ボードとワークスペースへの招待が保留中のユーザー」です。返事の無い招待が、人数枠を使っているということです。逆に、無効化されているアカウントは数えないとされています。数えるべきは名簿ではなく、管理画面に表示される人数です。
- 上の手順1〜4を、主要SaaS5本までについて進める
- 「消える」制限があれば、期限から決裁にかかる日数を引いた日を、有料化か書き出しの締め切りにする
- 「止まる」制限は、管理画面で招待中を含めた人数や使用量を数え、上限までの残りを控える
よくある質問
- Slack ヘルプセンター「無料ワークスペースにおける使用制限」 https://slack.com/intl/ja-jp/help/articles/115002422943-(2026年9月17日確認。「使用制限」の項の90日の非表示・1年以上の完全削除・アプリ最大10個、「データの保存」の項の90日経過後に削除する設定と「順次削除される場合があります」の記載を参照)
- Slack ヘルプセンター「Slack でのデータ保存をカスタマイズする」 https://slack.com/intl/ja-jp/help/articles/203457187(2026年9月17日確認。フリープランのメッセージ(データの保存)とファイル(ファイル履歴)の保存設定の選択肢、設定画面の開き方、削除は1日1回実行される旨、削除されたデータは復元できない旨を参照)
- Slack ヘルプセンター「ワークスペースのデータをエクスポートする」 https://slack.com/intl/ja-jp/help/articles/201658943(2026年9月17日確認。プラン別のエクスポートオプション表、フリープランのファイルリンクは過去90日分のみの注記、プライベートチャンネル・DMの書き出しは申請が必要な旨を参照)
- Slack 料金プラン https://slack.com/intl/ja-jp/pricing(2026年9月17日確認。フリーの「過去 12 か月分のメッセージにアクセスするにはアップグレードが必要です。」、プロ 年払い¥925/月払い¥1,050、プロの「無制限のメッセージ履歴」、よくある質問の28日間のアクティブ判定と日割りクレジット、支払い方法)
- アトラシアン サポート「無料ワークスペースのコラボレーター制限」 https://support.atlassian.com/ja/trello/docs/workspace-user-limit/(2026年9月17日確認。10人の上限、閲覧専用と自動化の停止、10人以上での新規追加不可、人数に数える対象と数えない対象(閉じられたボードにしか所属していないメンバーを含む)、有料プランは上限なし、ダウングレード時はサブスクリプション終了時点から10人までに制限、コラボレーターの削除による解消。一部の段落は英語原文のまま掲載されている)
- Trello 料金プラン https://trello.com/ja/pricing(2026年9月17日確認。Standard 年払い$5/月払い$6、米ドル建て。よくある質問の、複数のボードに参加しているゲストの請求)
- Notion 料金プラン https://www.notion.com/ja/pricing(2026年9月17日確認。フリーのファイルアップロード最大5MB、プラス 年払い¥1,650/月払い¥2,000、有料プランは最大5GBまでのファイルを無制限にアップロード可、ページとブロックは「メンバーが2名以上の場合は制限あり」とよくある質問の上限到達時の説明、ページの履歴「7日」、各プランの「日本の消費税(該当する場合)」、よくある質問の支払い方法)

