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使っているSaaSが止まった日に業務を止めない備え:SLAの読み方と代替手段の決め方(2026)

SaaSが止まった日の備えを示すアイキャッチ。1 業務をA・B・Cに仕分ける、2 止まる前に5つ用意する、3 当日30分の1枚を印刷、4 復旧後の後始末をその週に終える、の4ステップを示す図解で、1が強調されている。サブコピーは「契約(SLA)より、止まっている間の代わりの手段を先に決める」。脚注に、4手順の区分がjisalab編集部の整理(2026年9月21日)である旨の注記がある。 SaaS
この記事の結論(先に3行)
  • SaaSが止まっても、利用者の側にサーバーを直す手段はありません。備えられるのは「止まっている間、何で代わりに進めるか」だけです。
  • やることは4つ。業務をA・B・Cに仕分ける/止まる前に5つ用意する/当日30分の1枚を印刷しておく/復旧後の後始末をその週に終える。追加の費用はほぼかかりません。
  • 契約(SLA)には期待しすぎないこと。Google Workspaceの場合、30日の月に43.2分を超えて止まって初めてクレジットの対象になり、戻るのはサービスの日数分です。資格が生じた時点から30日以内に、自社から申請しないと権利を失います(リセラー経由の契約ならリセラーに通知します)。

朝、メールにも社内チャットにもログインできない。状況を聞こうにも、そのチャットが落ちている。SaaSの障害はこういう形で来ます。この記事は、中小〜中堅企業の情シス・総務・バックオフィス担当に向けて、数十分から数時間の停止を事故にしないための準備を4つの手順にまとめたものです。災害対策やBCP(事業継続計画)の策定ではなく、明日から始められる日常の備えを扱います。

最終更新: 2026年9月21日/引用した公的資料・規約は、すべて同日に原文を確認しています。業務の区分・手順・所要時間・金額の試算・チェックリストは編集部が作成したもので、引用した資料に同じ区分や手順があるわけではありません。出典の記述と編集部の解釈が隣り合う箇所にだけ「(編集部)」と付けています。本記事は業務手順の解説であり、契約条項の解釈や適用の可否を判断するものではありません。

SaaSが止まったとき、自社にできることは何か

サーバー側を直す手段は利用者にありません。自社でできるのは、止まっている間の代わりの進め方を先に決めておくことです。そのための手順が次の4つです。

IPA(情報処理推進機構)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版は、クラウドサービスのセキュリティ対策について、利用者の役割と責任範囲は「直接対策を講じることができるパソコン・スマートフォンなどの端末やネットワーク機器、それらにインストールされたソフトウェアに限定されます」と整理しています。セキュリティの文脈の記述ですが、サーバー側に手を出せない構図は、止まったときも同じです(編集部)。同じIPAの「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」も、サービスを選ぶときのチェック項目3で「クラウドサービスで取扱う情報が漏えい、改ざん、消失したり、サービスが停止した場合の影響を確認しましたか?」と問うています。次の4手順は、この確認を実際の備えに落とすものです。

4つの手順と、終わったときに手元に残るもの
手順 所要の目安 手元に残るもの
1. 業務をA・B・Cに仕分ける 部門長と1時間 A・B・Cの印が付いた業務一覧と、Aの業務ごとの「代わりの進め方」1文
2. 止まる前に5つ用意する 半日 通知の購読、連絡の代替経路、手元コピー、契約の控え、オフラインで開ける端末
3. 当日30分の1枚を印刷する 1サービス30分 サービスごとに印刷した1枚
4. 復旧後の後始末をする 障害のたびに、その週のうち 転記済みのリスト、障害の記録、クレジット申請の判断

所要時間は編集部の目安で、実測ではありません。

手順1:止まったら困る順に、業務をA・B・Cに仕分ける

全部は守れません。社外・お金・待っている人に響き、当日中に取り返せない業務をA、復旧後に当日中に取り返せる業務をB、翌日でよい業務をCに分け、代わりの手段はAにだけ用意します。

部門長と1時間とり、業務を書き出します。「経理」ではなく「請求書の発行」「入金消込」のように、担当者が1日のうちに着手する単位で出すのがこつです。出した業務に、下の表を上の行から順に当て、最初に当てはまった段階で止めます。

業務の仕分け表(上の行から順に当てる)
段階 当てはまる条件 業務の例 用意するもの
A 止まった瞬間に社外に影響が出る・お金が動く・人が待つ(どれか1つ)うえ、止まっている間に代わりの手段で進めないと当日中に取り返せない 受注、出荷指示、顧客からの電話・問い合わせ、シフトの当日連絡 代わりの進め方を1文で書く。データの手元コピーを持つ
A(連鎖) 社内の業務だが、止まると上のAの業務まで止まる 当日連絡がそこにしかない社内チャット、出荷や支払の承認が通る承認フロー Aと同じ
B 今日中に必要なもので、A・A(連鎖)に当たらないもの(復旧後に処理しても当日中に取り返せる) 社内会議、資料作成、日報 連絡の代替経路だけ確保する
C 翌日でよい、または見るだけの業務 締め日前の請求、分析・レポート、研修、過去資料の閲覧 何もしない

区分・条件・業務例は編集部の作成です。業務例は一般的な中小〜中堅企業を想定しているので、自社の業務に入れ替えてください。

業務の仕分け方を示す判定フロー。1つ目の問い「止まると社外・お金・待つ人に響き、代わりに進めないと当日中に取り返せないか」がはいならA。いいえなら2つ目の問い「止まると、Aの業務まで止まるか(連鎖)」がはいならA(連鎖)。いいえなら3つ目の問い「今日のうちに片づける必要があるか」がはいならB、いいえならC。Aには「代わりの進め方を1文で書く」、A(連鎖)には「Aと同じ扱いにする」、Bには「連絡の代替経路だけ確保」、Cには「何もしない」と添えてある。
仕分け表の判定の順番を図にしたもの。2つ目の問い(連鎖)が、社内の業務をAに拾い上げるための問いです。編集部作図。

表のAの条件にある「当日中に取り返せない」が、Aを絞り込む基準です。社外やお金に関わる業務でも、復旧後に処理して当日中に取り返せるならBとして扱い、連絡の代替経路だけ確保します。Aは、当日の担当者が代わりの手段へ切り替えて回せる数までに収めます。

Aに残った業務には、次の1文を書きます。「〇〇が止まったら、△△で進め、復旧後に□□へ転記する」。たとえば「受注管理が止まったら、当日分は紙の伝票で受け、復旧後に受注管理へ転記する」。この1文が当日の手順書そのものになります。「復旧を待つ」としか書けない業務は、その場で悩まず一覧の末尾に回します。多くは「そのSaaSにしかデータが無い」ことが原因で、手順2の手元コピーで解消します。

従業員20人の卸売業を想定すると、書き出した18件のうちAが3件(受注入力、出荷指示、顧客からの電話対応)、A(連鎖)が1件(配送担当への当日連絡に使う社内チャット)、Bが9件、Cが5件、といった落ち方になります(説明用の架空の例です)。

できた一覧は、止まるかもしれないSaaSの中には置かず、PDFか紙にして情シスとバックオフィスの2か所に置きます。手順2と手順3で作るものも、すべて同じ扱いです。見直しは年に1回か、主要なSaaSを入れ替えたときで足ります。

手順2:止まる前に、5つ用意する

ステータスページの購読、連絡の代替経路、Aの業務データの手元コピー、契約と管理者の控え、オフラインで開ける状態の5つです。追加の契約は要りません。

下準備として、使っているSaaSを一覧にします。部署が個別に契約しているものや、契約はしていないが業務で使っているものも含めます(一覧の作り方はSaaSの棚卸しでムダな出費を減らす手順で扱っています)。そのうえで、Aの業務を支えるSaaSから順に次の5つを用意します。

止まる前に用意する5つと、できたかどうかの確かめ方
用意するもの やること できたかの確認
1. ステータスページの購読 「サービス名 status」で検索するか、管理画面の告知欄やサイト下部のリンクから探し、メールかRSSで通知を受ける。障害時の問い合わせ先(サポートかリセラーか)も控える 通知の宛先が、情シス個人ではなく複数人が見るアドレスになっている
2. 連絡の代替経路 主に使うチャットとは別の会社のサービス、電話、SMSから選ぶ。会社支給の端末と会社アカウントで使えるものに限る 連絡先の一覧が、紙か会社の端末にある
3. Aの業務データの手元コピー 当日の受注リスト、当月の請求先一覧、顧客の連絡先など、Aの業務に要る項目だけを書き出す 月1回作り直し、古い版を廃棄している
4. 契約と管理者の控え 契約プラン、管理者のIDと担当者名、サポート窓口、リセラーの有無と担当者、SLAの請求期限を1枚に書く。パスワードは書かず、パスワード管理ツールの所在までにとどめる 控えを1枚にまとめてある(手順3で裏面に写す)
5. オフラインで開ける状態 オフライン機能があるサービス(Google Workspaceのドキュメント・スプレッドシート・スライドなど)は、オフライン設定を有効にしたうえで、Aの業務で使うファイルをファイルごとに「オフラインで使用できるようにする」をオンにする(Chrome か Edge が必要)。無いサービスは3の手元コピーで代える。業務用スマートフォンの公式アプリはサインインまで済ませる 設定した日のうちに、機内モードでAの業務のファイルが開ける

3つ目の手元コピーは、IPAの手引きのチェック項目10「サービス停止やデータの消失・改ざんなどに備えて、重要情報を手元に確保して必要なときに使えるようにしていますか?」に当たる準備です。ただし顧客の連絡先などの個人情報を含むので、備えが漏えいの原因にならないよう、扱いを同時に決めます(以下は編集部の整理です)。

  • 項目を絞る:連絡先なら氏名と連絡先だけ。与信や過去の取引履歴は書き出さない
  • 置き場所を決める:私物の端末には置かず、会社の端末は暗号化する。紙は施錠して保管し、担当者の交代・退職時に回収する(入退社でSaaSアカウントを取りこぼさない手順と同じ台帳で管理すると漏れません)
  • 紛失したときの初動を決める:自社の個人情報の取扱規程と照らし、誰が判断して誰に連絡するかを先に決めておく

書き出しの形式や件数上限など、SaaSからのデータの取り出し方そのものの注意点はSaaSを解約・乗り換える前にデータを取り出す手順で扱っています。5つ目のオフライン設定では、自動でオフライン用に保存されるのは最近使った一部のファイルだけなので、使うファイルは個別に指定します。管理者がオフライン同期を無効にしていると使えないので、管理コンソールの設定も確かめます。「設定したが中身が空だった」を当日に知ることのないよう、機内モードでの確認まで済ませてください。

手順3:止まった当日の30分を、1枚に書いて印刷しておく

当日は、判断できる人ほど問い合わせ対応に取られます。確認・切り分け・通知・切替・記録の順番を1枚にし、サービスごとに印刷して貼っておきます。

下の表が、そのまま印刷する1枚です。裏面には手順2の「契約と管理者の控え」を写します。情シスの机とバックオフィスの壁に1枚ずつ貼っておきます。

当日30分の1枚(サービス名:     )
時間 やること 注意
0〜5分
確認
発見時刻を書く。別の端末・別の回線(スマートフォンのモバイル回線など)から開き、モバイルアプリでも試す 自社の回線や端末の問題を先に外す
5〜10分
切り分け
ステータスページを見る(URL:    )。別の社員に、本人の端末とアカウントで試してもらう 掲載が無くても待たずに次へ進む。アカウントの貸し借りはしない
10〜15分
通知と一報の判断
代替経路で全社に1通:「何が使えないか/代わりに何を使うか/次の連絡はいつか」。今日の納品・請求・返信が遅れる取引先がいるかを各部門に聞く 原因や復旧見込みは書かない。取引先には担当者の名前で「遅れうる案件/いま分かっている範囲/次の連絡時刻」を伝え、復旧時刻は約束しない
15〜30分
切替
Aの業務を、手順1で書いた1文のとおり代わりの手段へ移す 「復旧後に転記する分」のリストをここで作り始める
15分〜復旧まで
記録
時刻・エラーの様子・事業者の告知を、スクリーンショット付きで時系列に残す(貼り先:    ) 貼り先は、止まったSaaSの外にする

記録は、後でクレジットを申請するときの材料になります。Microsoft Learnの解説「How to Read a Service-Level Agreement (SLA)」は、障害の最中と直後に残す記録として、時刻(タイムゾーンを含む)、エラーの詳細、リトライのログ、構成の証跡、事業者からの連絡の5つを挙げています。このうちリトライと構成は、それが条件になっているSLA向けの項目です。業務用のSaaSなら、時刻・エラー・事業者からの連絡の3つを1行ずつ残せば足ります(編集部)。書式は「09:12 JST/受注管理にログイン不可(503)/別回線でも同じ/スクショ有」のように1行で決めておくと迷いません。

手順4:復旧後の後始末を、その週のうちに終わらせる

転記、記録の保管、クレジット申請の判断、5分の振り返りの4つです。申請には期限があり、Google Workspaceの場合は資格が生じてから30日で、過ぎると権利を失います。

転記:二重計上を防ぐ順で戻す

代わりの手段で処理した受注や問い合わせを、本来のシステムへ戻します。障害の前後は同じ取引が二重に入りやすいので、次の順で進めます。

  1. 転記待ちリストには、停止中に受けた分だけを残す(復旧後に本番へ直接入れた分は消し込む)
  2. 本番へ入れる前に、同じ取引先・同じ金額・同じ日付の記録が無いかを検索する
  3. 転記した行に、転記日と担当者名を書く

転記は受けた本人が、復旧の翌営業日までに行います。紙の伝票の略記は、書いた人にしか復元できないからです。紙の伝票などの原本は、転記が終わっても記録と一緒に保管します。締め処理をまたぐ場合は、転記より先に経理へ「当月の請求が何件、発行待ちになっている」と一報を入れてください。

記録の保管:止まり方の癖を見る

手順3の記録は、ファイル名に「サービス名+発生日」を入れて、止まったSaaSの外に保管します。年に1回並べると、短く何度も止まるのか、まれに長く止まるのかが見えます。前者なら、1回ごとには小さくても、Google Workspace SLA のように月内の停止時間を合算する契約では、月の合計が約束値を割っていないかを記録から確かめます。1回ずつがしきい値に遠く、合計しても届かないなら、代わりの手段の準備に力を入れます。後者なら申請の段取りを整えておく価値があります。契約更新の判断材料にもなります。

クレジット申請の判断:3点を見て、迷ったら先に送る

自社の契約のSLAを開き、その月の稼働率が約束値を下回ったか、除外される事由に当たらないか、申請期限はいつか、の3点を確かめます。Microsoft Learnの解説も、SLAの算定式に記録を当てはめ、除外に当たる時間を差し引き、約束値と比べる順で判断するとしています。

クレジットは、黙っていても付くものではありません。Google Workspace SLAは、クレジットを受け取るには、資格が生じた時点から30日以内(within thirty days)にサポートケースを作ってGoogleに通知する必要があり、守らなければ権利を失う(forfeit)と定めています。リセラー経由の契約では、顧客がリセラーに通知し、リセラーがGoogleに通知する2段階です。この場合も期限はリセラーに連絡した日からではなく資格が生じた時点から進むので、控えに書いたリセラーの担当者へ早めに連絡します。Microsoft Learnも一般論として、事業者は通常クレジットを自動では適用しないと説明しています。

迷いやすいのは起算点です。同SLAの稼働率は暦月で集計されるため、資格が生じた時点(the time Customer becomes eligible)がいつかは条文から一意には読めません。Microsoft Learnの解説も、申請期限は「Common timeframes range from 30 to 60 days after the end of the billing month」としつつ、事業者ごとに異なると述べています。復旧したその週のうちに起票し、確定した数字は後から補うのが確実です(編集部)。起票の材料は、手順2の控え(サービス名とプラン)、影響を受けたドメイン、手順3の記録(開始・終了の時刻と合計時間、エラーの様子、事業者の告知)でそろいます。

5分の振り返り:次までに直す1点を決める

「当日いちばん手が止まったのはどこか」を1行だけ書きます。ステータスページを探して10分かかったなら購読が未設定、電話をかけられなかったなら連絡先の控え不足です。手順1〜3の紙に赤で書き込めば、それが次の版になります。

SLAの読み方:契約で取り戻せるのはここまで

稼働率99.9%は「止まらない」約束ではなく、クレジットが出る境目の定めです。下回っても戻るのはサービスの日数分で、売上の損失は埋まりません。

公開されているGoogle Workspaceのサービスレベル契約(2026年8月31日改定)を例に見ます。同SLAは、対象サービスの月間稼働率(暦月の総分数のうち、Downtime でなかった分数の割合)を99.9%以上と約束しています。他社のSLAは数値も定義も異なるので、自社の契約書で確認してください。

30日の月に止まった時間と、Google Workspace SLAのクレジット(試算は計算用の仮の値: 20人・1ユーザー月額1,600円)
その月の停止時間 月間稼働率 クレジット 試算(上限側の目安)
43.2分以下 99.9%以上 なし 0円
43.2分超〜7時間12分以下 99.9%未満〜99.0%以上 3日分 約3,200円
7時間12分超〜36時間以下 99.0%未満〜95.0%以上 7日分 約7,500円
36時間超 95.0%未満 15日分 16,000円

稼働率の段階と日数は同SLAの Service Credit の表(原文表記は「< 99.9% – >= 99.0%」など)によります。1行目・停止時間の換算(30日=43,200分。31日の月なら境は44.6分)・試算は編集部が補ったものです。試算は計算用の仮の契約額(月32,000円)の日割りで、実際の付与はSLAを満たさなかった対象サービスの分に限られます。クレジットはサービス日数の追加か、同じ日数分の額の将来の請求への充当で、上限は対象サービスごとに月15日分です。

何が停止時間に数えられるかも、思うより狭く定められています。同SLAの定義は次のとおりです。

“Downtime” means, for a domain, a period of time during which the user web interface for the applicable Covered Services used by Customer has more than a five percent user error rate. Downtime is measured based on server side error rate.

  • ドメイン単位で測る:一部の部署や一部のユーザーだけが使えない状態は、ドメイン全体では5%に届かないことがあります
  • 対象はWebの画面:定義が名指しするのは user web interface で、モバイルアプリやAPI連携は文言に入っていません
  • サーバー側のエラー率で測る:現場が「止まっている」と感じても、エラー率が5%を超えなければ数えられません

同SLAは、このクレジットを稼働率の未達に対する「sole and exclusive remedy」(唯一かつ排他的な救済)と定めています。Microsoft Learnの解説も一般論として「Credits don’t cover lost revenue, customer attrition, or reputational damage.」と注意しています。同SLAは、Google Workspace Essentials Starter エディションのサービスや不可抗力による問題などを除外しており、対象サービスも名指しで列挙されたものに限られます。契約で取り戻せる範囲がこの程度だからこそ、備えの重心は手順1〜4に置きます。

次に取る行動(チェックリスト)
  • □ 使っているSaaSを一覧にする(部署の個別契約や、契約外の業務利用も含める)
  • □ 業務を仕分け表でA・A(連鎖)・B・Cに分け、Aが当日に回しきれる数まで絞る
  • □ Aの業務ごとに「〇〇が止まったら、△△で進め、復旧後に□□へ転記する」を1文で書く
  • □ 5つを用意する(ステータスページの購読/連絡の代替経路/手元コピー/契約と管理者の控え/オフラインで開ける状態)
  • □ オフライン設定は、設定した日に機内モードでAの業務のファイルが開けるかを確かめる
  • □ 当日30分の1枚をサービスごとに作り、裏面に契約の控えを写して2か所に貼る
  • □ 自社の契約のSLAで、約束値・Downtimeの定義・除外・申請期限と申請窓口を読む
  • □ 障害のあとは、転記・記録の保管・申請の判断・5分の振り返りをその週のうちに終える

よくある質問(FAQ)

SLAが99.9%なら、年に8〜9時間は止まると覚悟すべきですか?
年単位で考えても、契約とは結びつきません。0.1%を365日に当てはめると8時間45.6分ですが、Google Workspace SLAの判定は暦月ごとです。1か月に集中して8時間止まればその月はクレジットの対象になり、毎月40分ずつ止まれば年に8時間に達しても一度も対象になりません。一方でMicrosoft Learnの解説は、99.9%のSLAについて「It also doesn’t mean that you should expect only 8.7 hours of downtime per year.」と注意しています。定義上の Downtime に当たらない障害は数えられず、実際に困る時間は契約上の数字を超えることがあるためです。
BCP(事業継続計画)を作るほどの規模ではありません。それでも必要ですか?
この記事の手順はBCPの策定とは別物で、数十分から数時間の停止を想定しています。必要なのは文書ではなく、仕分け表と当日の1枚で、追加の費用はほぼかかりません。将来BCPを作るときも、仕分け表と代わりの手段の一覧はそのまま材料になります。
同じ種類のSaaSを2つ契約しておけば安心ですか?
先に検討すべきことがあります。費用は2倍になり、顧客情報の管理や退職者のアカウント削除も2か所になります。また、2つあれば止まりにくいという見積もり自体に注意が要ります。Microsoft Learnの解説は、複数のサービスのSLAを掛け算して可用性を見積もる方法について「It assumes that all services fail independently, which rarely happens.」と注意しています。まずはAの業務だけを対象に、紙の伝票や電話のようにオフラインでも回る手段で受け、それでは回らないと分かった業務に限って二重契約を検討するのが順当です。

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出典
  • IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版(2026年3月)第2部(5)クラウドサービスの情報セキュリティ(利用者の役割と責任範囲)|IPA(PDF)
  • IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」(2026.6 Version 2.3/同ガイドライン付録7)チェックシートの項目3・項目10|IPA(PDF)
  • Google Workspace Service Level Agreement(Last modified: August 31, 2026)の稼働率・Downtime・Service Credit・申請期限・Maximum Service Credit・sole and exclusive remedy・Exclusions の各条項|Google Workspace。排他性の射程は原文では「for any failure by Google to meet the Google Workspace SLA」に限られ、除外条項の全文は原文でご確認ください
  • Microsoft Learn「How to Read a Service-Level Agreement (SLA)」(ページ情報: 2026年3月31日)の記録すべき5項目、請求可否の判断手順、申請期限の一般的な幅、クレジットの自動適用と填補範囲、composite SLA、99.9%に関する記述|Microsoft Learn。同文書は自ら「It isn’t specific to Microsoft SLAs.」とし、法的助言ではないと明記しています
  • 総務省「令和8年版 情報通信白書」第Ⅱ部第1章第8節 2 クラウドサービス(国内のパブリッククラウドサービス市場規模。図表Ⅱ-1-8-5・出典IDC Japan)|総務省
  • Google ドキュメント エディタ ヘルプ「オフライン時に Google ドキュメント、スプレッドシート、スライドで作業する」(オフライン アクセスの有効化。Chrome または Edge が必要)|Google ヘルプ
上記はすべて2026年9月21日に原文を確認しました。業務の区分と判定フロー、5つの準備、当日30分の1枚、復旧後の4点、所要時間の目安、停止時間の換算と金額の試算、チェックリストは編集部の作成です。本記事は一般的な業務手順の解説であり、SLAの適用や請求の可否は自社の契約書とサポートの案内で確認し、必要に応じて弁護士等の専門家にご相談ください。各社のSLA・料金・機能は変わるため、判断の前に最新の公式資料をご確認ください。

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